遠心 × マグネット  新たな制動曲線の構築

飛距離を決めるのは、ブレーキの弱さだけではない。

遠心ブレーキには、高回転域で強く働き、回転数の低下とともに制動力が弱まる特性がある。軽いキャストでは、その特性を活かした伸びのあるキャスティングが可能になる。

しかし、11ftクラスのロッドによるフルキャストでは事情が異なる。強烈な初速によってスプールは高回転に達し、遠心ブレーキの設定は非常にシビア。

ブレーキを弱めればバックラッシュが発生し、強めれば飛距離を失う。特に、空気抵抗が大きく飛行姿勢の不安定なミノーやダイビングペンシルでは、その傾向が顕著になる。

遠心ブレーキは回転数の二乗に比例する遠心力

遠心ブレーキ固定マグネット
基本原理遠心力+摩擦電磁誘導による渦電流
基本的な依存性遠心力は回転数の二乗制動トルクは低〜中速域で概ね回転数に比例
高回転域強い制動が発生しやすい磁気回路によって特性が変化
低回転域シューの押付力が急減回転していれば制動が発生
特徴初期制動を強く設定すると伸びを損ないやすい飛行後半まで補助制動を与えやすい

※磁気制動も比較用の単純化モデル。実機の曲線を示すものではない。
※回転数が半分になると、遠心力は4分の1になる。ただし、純正SVSシューでは摩擦係数、接触状態、シューの可動機構なども影響するため、制動トルクが正確に4分の1になるとは限らない。

ブレーキの核心

遠心ブレーキは高回転域を強く抑え、回転が落ちるにつれて制動が弱くなる。固定マグネットは、それとは異なる減衰特性を持つ。両者を組み合わせることで、遠心単独とは違う制動曲線を作れる。この制動特性の違いが関係している可能性が高い。遠心力の二乗特性が、そのままSVSの制動トルクの二乗特性になるとは限らないということ。

固定マグネットは、スプールが回転し始めた時点から制動トルクが発生する。 だから初期バックラッシュの抑制に効いている可能性が高い。遠心ブレーキもシューが接触していれば初期から効く。違うのは制動力の立ち上がり方だ。

Wブレーキの働き

キャスト初期

  • マグネットが回転の立ち上がりから制動を補助する。
  • 遠心ブレーキも高回転に応じて強く働く。
  • 強烈な初速でもスプールの過回転を抑える。

キャスト中盤

  • 遠心制動が弱まり、マグネットとの制動バランスが変化する。
  • ミノーの減速にスプール回転が追従しやすくなる可能性がある。

キャスト終盤

  • 遠心制動はさらに弱くなる。
  • マグネットによる補助制動が残り、着水前のラインの浮きを抑える。

固定マグネット単独のタトゥーラ300では初期から極めて安定するが、後半の伸びは弱い。一方、Wブレーキは固定マグネットを3個に抑え、遠心を主体にすることで、安定性と飛距離を両立している。つまり、磁気制動の強さそのものではなく、遠心との制動力の配分が重要という仮説が立つ。ただ、初期バックラッシュが出ない理由を磁気制動の立ち上がりだけで説明するのはまだ難しい。実際には、初期の総制動トルクとスプールの加速特性が効いているはず。

厳密にはマグネットの追加制動が初期と終盤だけで大きくなるわけではない。遠心制動との相対的な寄与率が変わるという理解が正確だと思う。飛距離を犠牲にせず、使えるブレーキ設定の範囲を広げたこと。これは単なるバックラッシュ対策より価値が大きい。「制動力を増やすためではなく、制動曲線を整えるためのWブレーキ」

異なる2つの制動特性を、1つに統合

GranblueLINKのW BRAKE SYSTEMは、遠心ブレーキを主制動とし、固定式マグネットによる補助制動を組み合わせたシステム。遠心ブレーキ単独では不足しがちなキャスト初期と終盤の制動をマグネットで補い、合成された新たなブレーキ特性を構築する。遠心ブレーキには純正SVSシューを使用。固定マグネットは、長期間の実釣研究によって最適化した3個を配置し、2つのブレーキを個別に調整する必要はない。

操作は外部ダイヤルひとつ

複雑な制動バランスはシステム側で最適化し、誰でもシンプルに扱える構造とした。
飛行姿勢が不安定なルアーほど、違いが現れる。約2年間の実釣テストで、特に優れた結果を示したのがミノーとダイビングペンシル。

遠心ブレーキ単独では飛行姿勢を安定させようとすると飛距離が犠牲になりやすい。

W BRAKE SYSTEMでは、キャスト初期から着水直前まで安定したライン放出を実現。飛行姿勢の乱れを抑え、着水時のサミングも最小限に。一方、空力的に安定したメタルジグでは、補助制動による効果は比較的小さい。

このシステムが最も真価を発揮するのは、高初速のフルキャストと、飛行姿勢が不安定なルアーの組み合わせだ。

9割のキャストから、10割のフルキャストへ。

遠心ブレーキ単独では、バックラッシュを避けるためにキャストの力を抑える必要があった。W BRAKE SYSTEMなら、ロッドの反発力を最大限に活かし、思い切って振り切れる。ブレーキを弱くして飛距離を稼ぐのではない。

安心してフルキャストできる。だから飛ぶ。

飛距離と安定性を両立させるために、制動特性そのものを見直した。

ボビンはすべて同じ
ブレーキだけを検証できます・・・

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください。

ABOUTこの記事をかいた人

遠投バカのソルトアングラーです。 下町スプールの製作を生業とした日本でも稀なスプール屋です。 グランブルーリンク代表